投稿

9月, 2020の投稿を表示しています

ワイヤード・ラブ

イメージ
第一章 1-1 雨が降り続いている。この雨は、もう、二週間も降り続いている。大粒の雨になったり小降りになったりしながらも、一度も降りやむことなく降り続いている。なぜこんなに雨が降り続いているのかはよく分からない。気象台もそれは分からないと言っていた。 ところで、僕はつい最近誕生日を迎えた。二十歳になった。 二十歳になったのだが、二十歳になったという実感も感動もない。かったるいという思いだけがある。 目を閉じると眼底の辺りが痺れている感じがしていて、この感じが後どれくらい続くのだろうかとか、指先の、特に右の中指の指先の軽い痛みがひどくならなければいいとか、左上の奥歯の周りの歯茎が少し腫れていて、この腫れはちょうど雨が降り始めた頃から始まったとか、両足の小指の横に出来かけている魚の目が時々靴と擦れて、その成長を知らせてくることとかはとてもよく実感出来る。 特に毎日沢山歩くというわけでもないのだが、何故か、いつの間にか魚の目が出来ていて、それがいつ出来始めたのか、その兆候がいつからあったのかは全く思い出せない。 今日も雨は降っていて、最初に降り始めた時に、乾いた窓硝子に降りかかる時の様や、窓硝子全部が濡れてしまって、一定の水の流れが出来てくるのを眺めながら、シャワーの水がバスルームの壁に当たる様と良く似ていると思ったりした。 きっと今日もここに座ったまま一日が終わっていくのを見ることになるだろうと思う。誰かから連絡があって、とても興味のあることがあったらどうなるかは分からないけれども、今までそんなことはなかったし、今日もあるような予感はしない。もっとも、今までに予感と呼べるようなものを感じたことはなかったし、これかな、と思えるような経験もない。 感動ということが、人間の喜怒哀楽のことだとすれば、僕にはそれが欠如しているのかもしれないと最近思うようになった。最近というのは、昨日のことだ。昨日が特にそれを思いつくのに適した日だったのかどうかは分からない。 でも、そう思ったのだ。昨日が特別にバッドだったとは思えない。いつもと同じように眼底の辺りが痺れていたし、右手の中指の先は骨からズキズキしていたし、左上の奥歯の周りは腫れていたし、魚の目は成長の信号を送っていた。 >明日は僕の誕生日で~す! と言った時から、僕たちの関係に決定的な変化が起きた。 僕たちは、誰かの誕生日がいつなの...