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THE LAST SALMON FISHER

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CHAPTER1 1-1 It was already the end of August. The eyes of the French were glued to two headline news articles in "Le Monde". One of them told of a flood in Paris. It said that the flood, brought by localised heavy rain, had destroyed several 1200 year old buildings. The second article was about a whale, with the headline, “Iron Whale Crashes into Fishing Boat". The night before he left Paris, Shin made a phone call to Godfrey the ghillie ---in Scotland people call fishing guides "ghillies"---. Usually he calls from Japan to find out how the weather is in Scotland before he leaves, but, as he happened to be finishing a shoot in Paris at the end of August that year, he decided to go to Scotland from Paris directly. Although he was going to be at Godfrey's cottage the following evening and would then see how the weather was with his own eyes, Shin always wants to know the state of the weather before he heads off. When he goes on a business trip, he thinks it ...

最後のサーモン・フィッシャー

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  第一章 1-1 八月も終わりの頃、ル・モンド紙のトップを飾る二つのニュース記事にフランス国民は釘づけになった。一つはパリの洪水。集中豪雨がもたらした洪水によって、千二百年前の建物が破壊されたとその記事は伝えていた。もう一つは、鯨のニュースだった。その見出しは、「鉄の鯨、漁船に衝突」となっていた。 パリを発つ前夜、真はギリー、スコットランドではフィッシング・ガイドのことをギリーと呼ぶ、のゴッドフリーに電話を入れた。いつもは日本から天気の確認の電話を入れるのだが、その年は撮影の仕事がちょうど八月末に終わるために、直接パリからロンドンに入ることにしたからだ。翌日の夕方にはコテジに着いているのだからそのときには分かることなのに、天候のことはどうしても出発前に知りたくなってしまう。仕事で出張するときには、心配したって仕方ない、行ってから考えようと思うが、釣りとなると気になってしまう。パリとロンドンの時差はたったの一時間だから、相手の時間をそんなに気にしなくても済む。電話にはゴッドフリーが直接出た。 「ハイ、シン。そろそろ電話がある頃だと思ってたよ」 「ハハハ、そうかい、ゴッドフリー。で、どうなんだ天気は」 「駄目だ。全く雨が降ってない」 「おいおい、また夜釣りか。サーモンは駄目なのか」 「この分だとそうだ。シー・トラウトはまずまずなんだが」 「シー・トラウトはもういいよ。今年こそサーモンを上げたいんだ」 「分かってるよ、それは。この天気はシェイムだ。だが、シン、天気だけはどうにもならない」 スコットランド人のプライドの高さとこだわりには定評があるところだが、ギリーのそれは異常な程で、完璧なコンディションでゲストに釣り場を提供できないときには、彼らに「恥」という表現を取らせる。 「気が重いなあ。ああ、ゴッドフリー、今フランスで鉄の鯨がニュースになってるの、知ってるか」 「ああ、あれは、鯨じゃない。レッド・サブマリンだ」 「レッド・サブマリン?」 「そうだ。夜中に北海を北上していくロシアの潜水艦だ」 「潜水艦なら潜って航行するんじゃないのか」 「潜れなくなった奴だ。バルチック艦隊で使えなくなった奴を北極海にでも捨てに行ってるんだろ、きっと」 「いい話じゃないな、それは」 「ああ、漁師たちは海の汚染を気にし始めてる」 「サーモンは大丈夫か」 「心配するな。サーモンはロシ...